milo23の『何でも食うよ。』

2020.5.25から再開。独白を綴っていこうかなとか思ったので。

鈴木桂治(柔道)

情熱大陸を見た。TBS系の30分番組だ。30分のせいか各個人の本質的なところまでは見せることをしない。というよりハナッから撮り手が諦めてしまっているように思う。したがって1個人の生活の切り取りを見せながらそのときの状態や心情を若干お茶の間にお届けしているに過ぎないのであるが、出てくる人物が魅力的だとそれでなんとかなってしまうものなのである。テレビってなんだろう。
さて、鈴木である。私は彼のことをほとんど知らない。
柔道の無差別級の世界王者になった逸材であり、現在はアテネオリンピック100kg級の代表を目指している若干23歳の男だということだ。
ちなみにオリンピックには「無差別級」という階級はなく、「100kg級」と「100kg超級」しかない。世界大会などの実績から、すんなりどちらかの代表に選ばれても良さそうなものなのにそうはいかないのだ。何故か?
実は世界大会で同階級で金メダルをとった選手が2名いる。1人は100kg超級は棟田康幸選手。そしてもう1人、100kg級には"あの"井上康生選手である。
この3人が2つの椅子を争う、というより井上と棟田、どちらかに鈴木が挑むという図式になるわけだが鈴木は迷わず井上のいる100kg級でのアテネ代表を目指すことにしている。
もともとこの階級だということもあるのだろうが、番組を通じて彼が語っていたことを振り返ると、ただ「あの人に勝ちたい・・・」というアムロ・レイランバ・ラルに対して思ったセリフ同様、男の子としての極めて単純な欲求だけなんだろうなぁと思った。井上康生に勝って五輪へ出たい。ただそれだけのために戦っている男なのだ。純粋だ。ピュアハートだ。同年代の輩からは欠落してしまっている"大切な何か"を持っている。素晴らしい男だ。
先日の4月4日、全日本体重別選手権が福岡で行われた。順当に行けば鈴木は決勝で井上とぶつかる。ともに準決勝までは順当に勝ちあがり、鈴木の目の前で井上は決勝へ駒を進めた。圧倒的な強さを見せ付けて。
だれもが順当に勝つもんだと思っていただろう。30年ぶりに満員になった観衆はその決勝を見にきたはずだから・・・
しかし結果はもう出てしまってる。鈴木は準決勝で敗退。しかも相手は井上の兄、智和選手・・・なんともやりきれない。本人に触れることすらできずに敗れ去ってしまったのだから・・・。
実は直前に指を怪我していたということだったが運も実力のうちだろう。鈴木自身も決してそのことは口外していなかったし、番組の最後の部分で少し触れるまで一切、公にはされていなかったし、きっと本人が一番わかっているのだろう。その心、潔し!ますます応援したくなった。
決して勝てない相手ではない。だって人間なんだもの。実際に6戦肌を合わせ、鈴木の2勝3負1分である。
4月29日、全日本選手権(無差別階級)が日本武道館で行われる。
チケットがあるか分からないがしっかと見届けに行きたいものだ。