milo23の『何でも食うよ。』

2020.5.25から再開。独白を綴っていこうかなとか思ったので。

博士が愛した数式(133分)

劇場は混んでいた。
混んでいたのはひとつの建物に9個もスクリーンがあるからだ。
で、みなのお目当ては・・・『有頂天ホテル
どいつもこいつも『有頂天ホテル
ポップコーンほおばりながら『有頂天・・・もういいか。
そのくらい並ぶやつみな『有頂天ホテル、2枚』とか窓口でいってた。
ああ、俺は単独さ!文句あっか!殺すぞ!(うそです)
と、ケンタッキーを貪り悔いながら、いつもギラギラする目でその光景を眺めるおっかないおっさん可して、窓口へ。


俺は映画を混んでる映画館でみるのは大嫌いである。
どうしても周りがきになって、集中できない。
それに、独り言をいうらしい。自覚ないんですが、なんか言いながらみているそうです。(ほんと危ない人ですな。。。)
そんなことはなくても、最初からこの映画をみるつもりであった。
なぜなら、メゾン・ド・ヒミコで予告を見た時に「いいな」って思ったから。
予想通りガラガラであった。レイトショーってのもあったけど。


この映画は「考える」映画であった。
泣こうと思えば泣けるし、コミカルなシーンも随所にちりばめられているが、けっして出しゃばらない。
観客に対して謙虚な姿勢を貫き通している。
考えることも決して押し付けがましくない。
そして何より「説明」しない。
厳密には説明しているけど、みなまで決して言わない。
これは観客を人間を信用しないとできないことだと思う。
大人の映画でした。


内容は考えることが多いのではあるが、メッセージは極めてシンプルだ。
真実は見えない所、己のココロの中にあるものなんですよ。って。
過去も未来もない、今、そこにいることが大切なんですよ。って。
感じたこと、感じることを大切にしましょう。って。
言われるまでもないことだと思うかもしれないけれど、こういうカタチで訴えられる(押し付けじゃなく)とココロの奥から、じわじわと湧き出てくるものがある。


私は泣こうと思うと泣けない。泣いた方がラクになれるとわかっていても、だ。
役者としては失格なんすけど。
でも、涙じゃない"なにか"が込み上げてくるってあるんだなぁと思った。


主人公である"博士"の言葉は一見難解な文章ではあるが、その全てにココロに響くものがあった。


記憶が80分しか持たない男。
10年間、時間が止まったままの男。
それが寺尾聡扮する"博士"である。


結婚できないことを承知で身ごもり、子を儲けた女。
10年間、ひとりで育て続けた女。
自分の力量を知り、家政婦として身を立てる女。
それが深津絵里扮する"新しい家政婦"である。


その子供。
強く覚悟を持って生きている母に育てられた男の子
その彼が大人になって数学の教師になる。
それが吉岡秀隆扮する"√"(ルート)


その3人(吉岡は語り部で実際は子役)のココロの交流と複雑なおとなの事情のお話。


友情とか恋愛とかそういうものを超えたところで成立する人間関係。
理想と現実の狭間で揺れ動きながらも、結局は単純なことだって気づけたとき、人は本当の"大人"になれるのではないかと思った。


好みはあるでしょうが、私はこういう映画は大好きです。(☆5)