milo23の『何でも食うよ。』

2020.5.25から再開。独白を綴っていこうかなとか思ったので。

「レスラー」と三沢について。その1

ご無沙汰です。
春を感じてもう1年以上。
いろんなことが変わっています。

ミクシィもあまり書いてませんが、今日はあまりに時間があったので書きました。
久しぶりにこちらにもアップします。

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このところ、よくよく考えてみると「ひとりで映画を見る」という贅沢な時間を過ごしていないことに気がついた。

人それぞれ、いろんな考え方があると思うが、私は本来、映画というものはひとりでじっくり観て、それぞれの場面の意味などをしっかり噛み締め消化した上で、同じ映画を観た人間を激論を戦わせ、互いの価値観を確認することがベストだと思う。

別に「ハリウッド・ハリウッド」している映画なら、そんなことする必要ないんだけど(わーいわーいと大はしゃぎでいい)、特にこういう映画は、観た人間の人間性までも浮き彫りにするような気がするのでなおさらです。


さて、終わることのない雑多な生活にアクセントをつけるべく、かなり覚悟を決めてこの映画「レスラー」を観たのは先週のこと。

・・・なんですが、その前に想うところがあって、この文章を記す。

もう既知のことだが、先日、プロレスリング・ノアの社長兼エース(といってもいいだろう。なぜならその輝きを超えるレスラーがノアにいるとは思えない)三沢光晴選手が試合中のアクシデントで他界した。46歳だった。

あの三沢が既に46歳ということにまず驚いた。思えば遠くへ来たもんだ。
古くからの友人であるダークサイド1go(言うちゃ悪いがどこがダークサイドなのか全く分からんわ!なぁ!金沢!)なんかも書いておるが、最後の相手となった齋藤彰俊選手に非があるとは全く思わないし、思えない。(「死神」のキャッチフレーズが皮肉なものになってしまったが)

あくまで私見だが、今回の事故は「今までの勤続疲労がこのタイミングで悲劇を巻き起こしてしまった」ということなのだと思う。

ある友人が言っていた。
「どんな仕事をしていても、命を落とすことがあるだろう。これは事故以外のなにものでもない」と。

男がなにかをやり遂げようとするとき、自分の身を削りながら前に進んでいく。
自分は中途半端な人間だとは思うが、今の仕事に関して、少なからずそう思うことがある以上、この事故は人事ではないのだと思うのだ。

プロレスとは、相手の技を受け、耐え、返し、お互いの良さを最大限に引き出しながら、リング上にその濃密な時間の純度をドンドン濃厚にしていき、最後は観客全てを納得させるカタチで一気に拡散。締めくくる。
ものすごく高度で、ものすごくハードな世界最高のエンターテイメントである。(私は観るほうにも高度な見識が要求されるジャンルだと思っています。)


そんな試合を日本全国で、ほぼ毎日続けてきた三沢。
私は全日本の四天王プロレス時代〜ZERO-ONE旗揚げ時の小川戦までしか、その息吹を感じることができなかった(川田好きなのでノアは感情的に敬遠気味だった。)が、極上の四天王プロレスをライブで見ることが出来たというのは、この上なく幸せなことだ。

だが、同時に不幸なことなんだと思う。
今のレスラーでは全く物足りないと感じてしまうからだ。
カクテル光線を浴び、真に輝いているレスラーは今、マット界に果たして何人いるのか?

時代に取り残されたといえばそれまでだが、猪木の毒を浴び、前田のイデオロギー闘争を受けつつ、大仁田の毒をも喰らい、食傷気味のところに「明るく・楽しく・激しい」馬場プロレスを堪能。様式美とハイスパートレスリングが入り混じった文字通り極上の四天王プロレスを経て、小川との戦いで完全に覚醒した破壊王プロレスをむさぼり食らった身としては、今はもう永田さんの白目くらいしか、ギャフンとならんのです。(相変わらずの武藤さんとDDTの高木三四郎も最高ですが)

その永田さんだって、ようやく花開いた感じでしょう。(好き嫌いもあるけど)

中邑や棚橋じゃ乗れないですよ。だって「リング内プロレス」だもの。観客と会話してるような試合にみえねぇよ。色気もねぇし。(今の新日本のレスラーほとんどそうだけど)

かつて、猪木は鏡の前で何万回もガウンの脱ぎ方を練習してたとなくなったI編集長が言っちょりました。
役者もそうだし、映像の世界もそうなんだが、独りよがりになってしまった瞬間にそれは「エンターテイメント」ではなく「オナニーショー」になってしまう。そんなもんは道場でやりゃいいんじゃぁあああぁぁあぁぁあああーーーーーーッ!!!!(机をドンッと叩く!)



・・・話はかなり反れた。

三沢がジャンボ鶴田(おそらく歴代最強日本人レスラー)に初めて勝ったのはなんと27歳。
猪木は紆余曲折の末、新日本プロレスを旗揚げしたのは29歳。
前田が第1次UWFに参加(旗揚げ?)したのは25歳!
どっこい人間力。胆力の違いといってしまえばそれまでなんですが・・・。

彼らはろくに道のなかった「四角いジャングル」で、自ら道を切り開いて行くことで、レスラーとしての色香を立ち昇らせ、その香りを観客席に充満させ、我々ファンを徹底的に泥酔させた。

しかし、今の選手たちは、舗装された道をただ歩いているだけに過ぎない。
彼らが「本物」になっていくには、まだまだ時間がかかるだろう。永田さんのようにとっとと既知外の世界を覗けばいいのに。(まぁ、ミルコやヒョードルとやる必要があるが・・・。)



今回の事故で、安全面の強化が叫ばれ、そういう方向での環境整備されることは望ましいし、実際にそういう動きはいままで何度でもあり、大分改善されてきたと思う。
しかし、それ以前に、レスラー側の「魅せる技術」の部分で「大技=客が沸く」という、安直な発想から、抜け出す時期に来ているのではないかと思う。実際、武藤さんなどは技のレパートリー少ないわけだし。

ハッスルやマッスルをバカにしている選手もいると思うが、あれからも見習うべきところはたくさんある。

クリエイティブなジャンルにおいて、新たな発想の拒絶はそのジャンルの衰退と等しい。


三沢光晴という偉大なるレスラーの死を無駄にしないためにも、プロレス冬の時代を再度向かえないためにも、業界全体で大いに考えていってほしいことだと思います。




※ネットに前田の私見が乗ってました。
http://www.cyzo.com/2009/06/post_1712.html
これ、かなり納得の文章です。特にドキッとした部分抜粋。

「ちゃんと検証しないとね、絶対また誰かやるよ。みんなね、自分たちが危険なことをやってるって認識がない。全員がプロレスをナメちゃってるんですよ。やってる人間も、レフェリーも、観客も。どっかで『大丈夫だろう』と。」

時代の大いなる罪、でしょうか。肝に銘じておかないと。