milo23の『何でも食うよ。』

2020.5.25から再開。独白を綴っていこうかなとか思ったので。

K・Nの悲劇 高野和明著

今日買った7冊。
読み始めはこれでした。


以前コメントした"グレイヴディッカー"と"13階段"と同じ筆者ではあるが、3作とも色合いがかなり違う。
違うのだけれども、「贖罪」と「時間制限」という二つの縛りは共通するものである。


前記はおそらく筆者が執筆する上での核を為すところなのだろう。
後記は彼の小説が「エンターテイメント」として成立させているひとつの手法なのだろう。
テーマが明確な上、読んでいて飽きさせないというのは、どんな本でも大事な要素だと思う。(当たり前か)


手法のおかげだけではないのだが、書を全て読み終えることができた。そこで、書に内在する筆者のテーマについて、改めて真剣に考えさせられる。
これは小説が小説として娯楽という要素だけではなく、社会的にも問題定義することで、個人の意識にも、見えていなかった現代社会の問題点について、考える機会を与えてくれているんじゃないかと思った。同時にそれって実は、凄いこと、簡単にはできないことなんじゃないかなと思う。


今回の作品で筆者が登場人物であるライターに保健所で処分されている動物のルポを取材させる場面がある。
そこで捨てられる多くの動物に対する飼い主(人間)の無責任さを感じ憤る。
そのことが後にその登場人物に跳ね返ってくるのだが、我々ひとりひとりも、そういう無自覚な意識で知らぬ間に、罪を犯しているのかもしれない。


毎度のことだが、世の中には知らないことが数多くあるし、知ってしまってもどうすることも出来ないこともある。
だが、知ることでなにかを感じ、それを後に活かすことができるのは、人間という生き物にできるハズだと思う。


この本で女性と母性について、改めて考えたのだが、女性が読んだ時の感想がどういうものなのか聞いてみたいと思う次第である。